2000年バイク北海道第三部

7月26日(水)

 朝起きるとウトロの町は晴れています。ただ羅臼岳の方角にはには雲があり、山頂での景色はとても期待できそうにありません。藤並さんは「自分一人なら登らないと思う」と言いながらも、付き合って登ってくれる事になりました。登山コースは岩尾別の木下小屋から弥三吉水、銀冷水、羅臼平を経て山頂を目指します。羅臼岳は標高1,600メートル足らずですが、出発地点の標高が低いので標高差だけでいうと、富士山の5合目から山頂まで行くのとあまり変わりありません。ただ毎日30分のランニングをしているので体力には自信がります。キャンプ場から出発し、途中のコンビニで昼食と1リットルのミネラルウォーターを買い、岩尾別の登山口に向かいました。登山口の木下小屋の下の駐車場にバイクを止めていよいよ登山がスタートしました。いきなりの急坂のうえにクマが大変多いので注意との看板です。藤並さんのつけている鈴の音を聞きながらまだまだ元気に登り始めました。登り始めてから最初は天気もよく、少し標高を稼ぐと下にはオホーツク海がきれいに見る事が出来ました。

 1時間20分ほどで弥三吉水に着きました。ここではとてもおいしい湧き水がこんこんと湧き出ていて、少し疲れた体においしい水が活力を与えてくれます。このあたりもまだ晴れていますが、山の上を見ると完全に雲の中です。雲の中に入るのも時間の問題などと考えながら弥三吉水を後にしました。約1時間程歩いた銀冷水のあたりで完全に雲の中に入り、標高も上がったことにより寒くなってきました。ここで数分休憩のあとトレーナーを着て出発です。出発して数十分あるくと、残雪が沢沿いにあり登山道もこの雪の上を歩くようになります。最初は雪の上を軽快に歩いていましたが、徐々に勾配がきつくなります。ここで靴のあとがそのまま雪の上を進んでいるものと、低木の林の中に入っていくものに分かれています。どちらにするか悩みましたが、このまま雪の上を進むのは滑落の危険があるので林の中を進む事にしました。林の中と言っても、ほとんどブッシュの中の藪漕ぎです。草を掻き分けやっとの思いで雪の無い場所にたどり着きました。ここから数分歩くと羅臼平です。本当ならここから素晴らしい景色が見渡せるはずですが今日は全く視界がききません。ここでは休まず山頂に向かうことになりました。ここからはのぼりが本当にきつくなります。何度も休みながら這いつくばるようにして登り、羅臼平から1時間くらいかかり山頂に手前に到着しました。山頂付近は霧雨とすごい風でとても立っていられないほどです。山頂の手前では数人のグループが山頂に上る順番待ちをしています。聞けば今いる場所から先は岩場の風が吹きさらしの場所で一人一人行かないと危ないし、山頂もせまいので二人が限度とのことです。実際にその吹きさらしの岩場を見るとすごいの一言です。できればパスしたいような所ですが、若い女の子も山頂に行っているのでここで引き返すわけにはいきません。前にいたグループ全員が山頂を制覇しとうとう自分達の番です。意を決して吹きさらしの岩場を進みました。本当にすごい風です。岩の上を這って進み、とうとう羅臼岳の山頂に立つことが出来ました。景色など全く見えませんが、ものすごい達成感です。

 ただ本当に風が強いので、立つことなど全くできません。上半身を上げて写真を撮るのが精一杯でした。山頂から手前の岩場までの這いつくばって何とか戻り、岩場のかげでホッと一息つきました。ちなみに晴れている時の羅臼岳山頂の眺めは本当にすばらしいの一言で、藤並さんが晴れているときに登った時の写真を送ってくれました。とても同じ場所から撮った写真とは思えません。


晴れているときの羅臼岳山頂からの景色

 下りは足が言う事が利かなくなるのを我慢しつつ、何度も踏ん張れずに転びそうになりながら、弥三吉水まで下りてきました。行きは晴れていたこの場所も午後になると雲に覆われてしまっています。ここでは湧き水を飲みながら休憩のあと、木下小屋を目指し下山を再開しました。膝が笑うのを必死に絶えて木下小屋まで下りてきました。山頂では風が強く怖い思いをしましたが、下りてくると辛い思いよりも楽しかったことしか思い浮かばないのが不思議です。

 疲れた体でバイクに乗り、キャンプ場に戻った後は夕陽台の湯にのんびり浸かり疲れを癒しました。コンビニで夕食を買い、ビールを飲みながら楽しかった羅臼岳登山を語りました。

7月27日(木)

 バイクでの北海道最終日が来ました。今日は知床から出発して美瑛、旭川を通り小樽発23時30分の新日本海フェリーすいせんに乗船して帰ります。朝7時には撤収を終了して、藤並さんに見送られ、知床野営場を出発しました。キャンプ場を出ると虹がきれいに海に向かってかかっています。

 ウトロを出発し網走に向かいますが、バイクのガソリンがないので、GSを探しますが斜里では時間が早すぎて全部開店前で開いていません。途中リザーブにして網走に向かいます。網走に近づくにつれて雲が厚くなり嫌な予感が漂います。網走の手前でやっとで開いているGSを見つけ不安は無くなりました。ここで雨が降りそうな予感を信じて合羽を着て出発しました。網走から女満別を経て美幌に向かいます。網走の町を通り網走湖畔に出たあたりでものすごい雨が降ってきました。土砂降りの雨の中よろよろと美幌まで走っていくと、雨は上がってくれました。予報だと今日の北海道は道央は晴れの予報が出ているので、これから向かう方角は天気が期待出来そうです。美幌からR240で津別経て阿寒湖畔へ。ここからR241で足寄に向かいます。途中オンネトーに寄り記念撮影です。日差しが出ていないので水の綺麗さがあまりよく分かりません。

 足寄のコンビニでおにぎりを立ち食いして上士幌へ。このあたりから徐々に晴れ間が出てきました。上士幌からはR274に出て新得を目指します。この道は北海道らしい平原の中をひたすらまっすぐ走る道で、北海道を感じるにはとても良い道だと思います。鹿追からは道道に入り、新得R38に出て狩勝峠の坂道を登り始めました。このあたりからどうも、クラッチの切れが悪くなり思い切り握っても、クラッチが切れなくなってきていました。それでもまだそれほど重大な事だとの認識ははなく、狩勝峠では記念撮影し、クラッチレバーの位置を調整すると何とか元に戻ったようです。狩勝峠では、天気も晴れていて十勝平野の景色がきれいです。

 狩勝峠を出発し富良野町ではラベンダーを見に富田ファームに行ってみました。しかし7月末となるとすでにラベンダーのピークは過ぎていてもう元気がありません。やはりラベンダーは7月中旬までが良さそうです。

 富田ファームに着く頃にはクラッチの切れが非常に悪くなってきています。握れば握るほど切れなくなって来るのが良く分かってきました。ファーム富田を出発し美瑛の丘で記念撮影しようと思いましたが、美瑛に着く頃には信号で止まるのが辛くなってきました。R237を旭川に向かいつつバイク屋を探しますが全くありません。何とか旭川に入りR237から環状線を北に向かって進みますが、バイク屋は全く無く、この頃にはほとんどクラッチが切れなくなってきました。パニックした頭で原因を考えてみると、このジワジワと切れなくなる症状はクラッチフルード(XJR1200は油圧クラッチなのです。)が漏れていて徐々にオイルが無くなる事によりクラッチが切れなく事に気が着きましたが後の祭りです途中バイクを降りて自分の足で走ってバイクを探しましたが見つからず、悪い事に走っている途中にカメラを落としてしまい壊れてしまいました。このカメラは3年前に家族で来たときに旭川で買ったAPSで、旭川で買って旭川でその運命が終わると言う皮肉な結果になりました。結局環状線ではバイク屋は見つからず、R40を旭川駅に向かって走り始めました。この頃になると信号待ちではエンジンを切り、青と同時に2速でエンジンを掛けた瞬間に走り出すという危険な事をしながら何とか進んでいました。いよいよもうダメ、というところで、ハーレーダビッドソンの代理店が目に飛び込んできました。やっと助かった・・・・が素直な感想です。早速見て貰うと、XJRとFJはよくこの症状がでるとの事で、「油圧クラッチのピストンアッセンブリーを替えないと治らない」とあっさり言われまた、突き落とされた気分になりましたが、「今日の小樽発に乗って帰るから何とかして欲しい」と頼み込むと、とてもやさしいメカニックのおじさんは作業に取りかかってくれました。ピストンASSYを取り外し、中を分解しオーバーホールしています。中を見るとピストンは傷だらけで、この傷が原因でオイルが流れ出たようです。ピストンを分解し清掃後に組み付け、エア抜きし完成です。部品自体を交換していないので、またオイルが漏れ出す可能性も十分あるのであまったオイルを予備としてもらい、減ってきたら継ぎ足しながら小樽に向かうこととしました。最後に精算となりますが、自分では5000円くらいかな〜、と思っておじさんが弾いている電卓を見ると、7,000円くらいの数字が出ていました。お金を払おうとすると、なんと「3,500円でいいよ!」とのやさしいお言葉。無理やり治してもらってさらに、負けてくれて本当に感激しました。丁重にお礼を行ってこのバイク屋さんを後にしました。旭川ではこのまま小樽に行くのももったいないので、山頭火のラーメンを食べましたが、疲れた体においしいラーメンは生き返りました。しかし山頭火から出て、バイクのクラッチピストンを見るとオイルが少し漏れ出しています。なるべくクラッチは使わないようにと、信号で止まる手前以外はクラッチを使わずに行く事にしました。旭川から出発し、深川からは道道に入り増毛より日本海に出る予定です。日本海側のR231の方が信号が無くクラッチを握らなくてすみそうだと考えました。途中深川の街中の止まった信号で、クラッチフルードを覗き込もうとすると、バイクがぐらっと傾き途中で堪えきれず道の真中でたちゴケです。こうなると荷物満載の1200ccは全く一人の力では起こすことは出来ません。誰か助けてくれないかな〜と思っていると近くのGSの若い店員さん二人が来て助け起こしてくれました。感謝感謝です。その後はクラッチに気を使いながらも順調に走り、増毛から日本海側にでて小樽を目指します。そろそろ夕方となり、太陽が日本海に沈み始めました。ここでちょうどパーキングがあり、休憩しながら夕陽を眺めていました。ためしに壊れたカメラを向けると最後の力を振り絞ったのか、かすんだ一枚を撮る事ができました。

 ここでもクラッチフルードの残量をチェックすると、ほとんど減っていないようです。何とか帰れそうだと手ごたえをつかみ、小樽に向かって走り出しました。真っ暗になった国道を小樽に向かい、途中コンビニとGSに寄り、小樽に着いたのは8時過ぎでした。乗船手続の後は、乗船を待つライダーと北海道の思い出話をしながら10時の乗船開始を待っていました。10時過ぎにすいせんに乗船。船内の案内所でベッドの指定を受けて船室に入りました。この船は家族で乗ったことはありますが、2等寝台は初めてです。船自体が新しいので、1等船室同様に清潔でなかなか快適です。ただ、そのすいせんとすずらんはバイクの積載スペースがとても小さくバイクの予約を取るのは至難の技なのが、ライダーにとっては残念なところです。大浴場で入浴し、ビールを飲みながら他のライダーと思い出話に花をさかせて、結局寝たのは12時過ぎでした。

7月28日(金)

 今日は夜8時までフェリーの中ですが、いつものように子供達がいないので、時間をもてあまし気味です。それでも、ロビーにあるテレビを見たり、売店で買った雑誌を読んだり昼寝をしたりしていると、下船の時間が近づいてきました。途中、船内放送で案内所に呼び出されると、自分のバイクの置いてある位置が車の出入りに支障がある所らしく、1番最初に下船させてくれるとのことです。バイクは1番最後だと思っていたので、うれしい誤算でした。他の乗客とは一足早く車両甲板に戻り、荷物を積み込み下船を待ちます。ゲートが開いてすぐに下船し、そのまま敦賀ICから北陸道に乗ります。途中、大垣あたりで雨に降られましたが、すぐ止むことを信じて合羽も着ずに走りつづけます。雨はすぐに止み、結局自宅に着いたのは11時前くらいでした。クラッチトラブルはありましたけど、とにかく予定通り帰って来ることができてよかった!というのが帰ってきた時の率直な気持ちでした。

 バイクを持ってから、ずっと行きたいと思っていた北海道ツーリング。雨などで予定は大幅に狂いましたが、やはり車で走るよりも走る喜びはずっと大きいのは確かです。バイクで走り回るだけでは物足りないと思っていたので、大荒れの羅臼岳登山も思い出深いものとなりました。家族で行っても、とても楽しいけど、バイクで行くのもまた違う楽しさがあることが分かったツーリングでした。

おしまい

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